【個人事業主】と【法人】税金の違い
個人事業主になったけど、税金にはどんな種類があるんだろう?
税金には、国に納める税金(国税)と都道府県に納める税金(地方税)があります。
順番に解説していきますね。
個人事業主と法人では、国税と地方税の種類が異なるので、個人事業主の税金の種類を把握しましょう。
区分 | 個人事業主 | 法人 |
国税 | 所得税 | 法人税 |
国税 | 消費税 | 消費税 |
国税 | 特別復興所得税 | 法人特別所得税 |
地方税 | 個人住民税 | 法人住民税 |
地方税 | 個人事業税 | 法人事業税 |
地方税 | 地方消費税 | 地方消費税 |
- 個人事業主の税金の種類
- 個人事業主が節税できる方法
税金の種類【個人事業主】
個人事業主に課せられる税金は、5種類あります。
- 所得税
- 特別復興所得税
- 住民税
- 個人事業税
- 消費税及び地方消費税
1つずつ具体的に見ていきましょう。
①所得税
所得税は1月1日〜12月31日までの事業所得にかかる国税です。
事業所得とは、売上の総額から必要経費を引いた金額をいい、事業所得からさらに所得控除額(配偶者控除や扶養控除など)を差し引いた金額に対して税金がかかります。
個人事業主の場合、所得税は累進課税のため、売上が多くなればなるほど税率も高くなります。
さらに必要経費として認められる範囲が法人と比べると少なく、所得金額が4千万円以上になると、所得の半分近くが税金として徴収されてしまいます。
赤字経営となってしまった場合には、個人事業主の場合には所得税や住民税の負担はありません。
所得税速算表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円〜1949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
例:所得金額が7,000,000円の場合の税額
7,000,000円×0.23 – 636,000円= 974,000円
②復興特別所得税
復興特別所得税は東日本大震災の復興対策のための税金で、平成25年〜令和19年まで所得税の納付義務がある人は納付する義務があります。
復興特別所得税は「基準所得税額(所得税額から配当控除やローン控除などを差し引いた額)」×2.1%となります。
例:基準所得税額500,000円の場合の復興特別所得税
500,000円 × 2.1% = 10,500円
③住民税
住民税は住所のある都道府県、市区町村へ納める地方税で、所得割と均等割から構成されています。
確定申告を行うと住民税課税決定通知書が送られてきます。
所得割
所得割は、前年の所得金額によって課税額が決まります。
所得割=(事業所得金額-所得控除)×税率-税額控除
税率は、都道府県民税と市区町村民税を合わせて10%が標準として定められています。
例:東京都在住、所得金額500万円(所得控除50万円)の場合の住民税所得割
- 所得割:(5,000,000-500,000)×10%=450,000円
均等割
均等割とは、定額で課税される税金のことで所得に関わらず税額が決まっています。
自治体によって金額が異なるので、住所地の自治体に確認しましょう。
例:東京都の均等割
- 都民税:税額は1,000円
- 区民税:税額3,000円
平成26年〜令和5年度の間は復興特別税(都民税・区市町村民税に500円ずつ)が加算されているので、都道府県民税1,500円、市町村区民税3,500円の合計5,000円が徴収されています。
所得割:(5,000,000-500,000)×10%=450,00円
均等割:道府県民税1,500円+市町村区民税3,500円=5,000円
所得割45,000円+均等割5,000円=50,000円
④個人事業税
個人事業税は都道府県に納める地方税のことで、事業によって3%〜5%の間で課税額が異なります。
区分および事業の種類 | 税率 |
---|---|
第1種事業(37種) 物品販売業/運送取扱業/料理店業/遊覧所業/保険業/船舶定係場業/飲食店業/商取引業/金銭貸付業/倉庫業/周旋業/不動産売買業/物品貸付業/駐車場業/代理業/広告業/不動産貸付業/請負業/仲立業/興信所業/製造業/印刷業/問屋業/案内業/電気供給業/出版業/両替業/冠婚葬祭業/土石採取業/写真業/公衆浴場業(むし風呂等)/電気通信事業/席貸業/演劇興行業/運送業/旅館業/遊技場業 | 5% |
第2種事業(3業種) 畜産業/水産業/薪炭製造業 | 4% |
第3種事業(30種) 医業/公証人業/設計監督者業/公衆浴場業(銭湯)/歯科医業/弁理士業/不動産鑑定業/歯科衛生士業/薬剤師業/税理士業/デザイン業/歯科技工士業/獣医業/公認会計士業/諸芸師匠業/測量士業/弁護士業/計理士業/理容業/土地家屋調査士業/司法書士業/社会保険労務士業/美容業/海事代理士業/行政書士業/コンサルタント業/クリーニング業/印刷製版業/その他の医業に類する事業(あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復)/装蹄師業 | 5% ※その他の医業に類する事業(あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復)、装蹄師業に関しては税率3% |
個人事業税額 =(収入 - 必要経費 - 専従者給与 - 各種控除 - 事業主控除290万円)× 税率
業務で発生した費用は必要経費に含まれます。
出張時の交通費や事務作業で使うペンやノートなどの購入代金、外注した場合の外注工賃など全て必要経費になります。
専従者給与は家族従業員に払う給与なので、給料を支払った場合には差し引きます。
各種控除や事業主控除290万円を差し引き、業種ごとの税率をかけたものが個人事業税額となります。
納税した個人事業税は経費として計上できますが、個人事業税の計算は290万円(事業主控除)を差し引いて計算するため、所得金額が290万円以下の場合は事業税は納める必要がありません。
⑤消費税・地方消費税
消費税は受け取った消費税分から、仕入れなど経費で支払った消費税分を差し引いた額を納税します。
課税売上高(税抜)× 税率 - 課税仕入高(税抜)× 税率
令和3年の税率は10%で内訳は以下の通りとなります。
- 消費税=7.8%:国に納める税金
- 地方消費税=2%:地方自治体に納める税金
※軽減税率の場合は6.24%が消費税が6.24%、地方消費税が1.76%になります。
例:課税売上高800万円、課税仕入高400万円の場合の消費税
8,000,000 × 10% – 4,000,000 × 10%=400,000円
- 国に納める消費税:312,000円
- 地方消費税:88,000円
個人事業主の場合、前々年の売上が1,000万円以下であれば、その年の消費税の納税は免除されます。
その場合、売上高が1,000万円以上になった事業年度の2年後から納税義務が発生します。
注)前々年の売上高が1,000万円以下でも、その翌年の1月1日〜6月30日の期間に、売上高または給与支払額が1,000万円を超えた場合には、課税事業者になります。
課税期間ごとの受け取った消費税額よりも支払った消費税額のほうが多い場合、消費税の還付を受けることができます。
ここまで個人事業主の税金の種類について解説しました。
続いて所有物にかかる税金について紹介します。
所有物にかかる税金
税金の対象になる所有物がある場合にはその税金もかかります。
ここでは「固定資産税」と「自動車税」について解説します。
固定資産税
個人事業主でも、土地や建物を所有している場合には固定資産税がかかります。
固定資産税は、土地や建物などの固定資産に対して課せられる税金のことで税率は1.4%となります。
固定資産税を納める額
土地 | 課税標準額 × 税率1.4% |
家屋 | 課税標準額 × 税率1.4% |
償却資産 | 課税標準額 × 税率1.4% |
自動車税
個人事業主でも自動車を所有していれば、自動車税がかかります。
以下は乗用車の自動車税の早見表になります。
車種 | 自家用 | 営業用 |
1リットル以下 | 25,000(29,500) | 7,500 |
1リットル超~1.5リットル以下 | 30,500(34,500) | 8,500 |
1.5リットル超~2リットル以下 | 36,000(39,500) | 9,500 |
2リットル超~2.5リットル以下 | 43,500(45,000) | 13,800 |
2.5リットル超~3リットル以下 | 50,000(51,000) | 15,700 |
3リットル超~3.5リットル以下 | 57,000(58,000) | 17,900 |
3.5リットル超~4リットル以下 | 65,500(66,500) | 20,500 |
4リットル超~4.5リットル以下 | 75,500(76,500) | 23,600 |
4.5リットル超~6リットル以下 | 87,000(88,000) | 27,200 |
6リットル超 | 110,000(111,000) | 40,700 |
固定資産税と自動車税について紹介しました。
ここからは個人事業主ができる税金対策について解説します。
個人事業主(フリーランス)の税金対策【節税】
個人事業主の税金は、節税対策で税金を安くすることが可能です。
個人事業主は、収入(売上高など)から経費を引いた金額(事業所得)に課税されます。
この事業所得を元に所得税や住民税は計算されるので、事業所得を減らせば税額を安くできます。
事業所得を減らすには経費を多く計上することがポイントになります。
- 青色申告をする
- 経費はモレなく計上
- 家賃と光熱費は按分で経費に
- 消費税や固定資産税を経費に
- 短期前払費用の特例を活用
- 個人年金や保険に加入する
- 小規模企業共済・経営セーフティ共済へ加入する
- ふるさと納税を活用
具体的な節税対策を解説していきます。
①青色申告をする
個人事業主(フリーランス)の節税対策で最初にやってほしいのは青色申告をすることです。
確定申告には、青色申告と白色申告があります。
青色申告は、複式簿記による記帳を行い、損益計算書と貸借対照表という決算書を作成する方法です。
白色申告より手間がかかりますが、節税効果は大きいく、青色申告で確定申告をすると最高65万円の特別控除が受けられます。(白色申告だと10万円控除)
また、家族従業員がいる場合、家族従業員への給与はすべてを経費にできます。(白色申告では専従者控除で配偶者86万円、その他の親族50万円まで)
さらに赤字が出た場合、来期以降の黒字と相殺し、税金を減らせたり(繰越控除)、30万円未満の備品を購入した場合、一度に必要経費にできるなどの特典があります。
②経費はモレなく計上
所得税や住民税の税額は、所得の額によって決まるので、経費を多く計上することで所得の額を減らし、税額を減らすことにつながります。
金額が多くなる仕入れ関連や人件費関連は計上し忘れることは少ないですが、文房具や交通費、取引先との飲食代など細々したものは計上し忘れがちです。
仕分け作業は会計ソフトを利用すれば自動で勘定科目の候補を示してくれるので、簡単に仕分けできます。
会計ソフト使ってもめんどくさくなりそう。。。
レシートや領収書は溜め込んでしまうと、億劫になるので時間がある時に少しずつ入力していけば、大丈夫ですよ!
③家賃と光熱費は按分で経費に
個人事業主やフリーランスの場合、自宅兼事務所という方がほとんどだと思います。
その場合、家賃と光熱費は実際に仕事で使っている面積と時間で按分(割振り)すれば、経費にできます。
仕事で使用しているスペース(机、パソコン、資料がある棚など)を自宅の面積で割れば按分比率が算出できます。
自宅が50㎡、家賃10万円、事業スペース20㎡とした場合、20㎡÷50㎡=0.4で按分比率は40%となり、家賃10万円の40%である4万円を地代家賃として計上します。
礼金(20万円未満)や更新料、仲介手数料や共益費も経費にできますが、契約終了時に返還されるものは(敷金や補償金)は「敷金・保証金」として資産計上し、契約終了時に返還されないものは、「長期前払費用」として計上します。
項目 | 勘定科目 |
---|---|
家賃、共益費 | 地代家賃 |
礼金・更新料 | 長期前払費用として資産計上する ※20万円未満のものは全額を「支払手数料」で処理する。 |
仲介手数料 | 支払手数料 |
敷金・権利金・保証金 | 契約終了時に返還されるものは、「敷金・保証金」として資産計上する。契約終了時に返還されないもの(家賃2か月分は償却するなど)は、「長期前払費用」として資産計上する。 |
キッチンやトイレも、使用割合を按分して経費計上できます。
持ち家の場合、元本以外の返済中のローンは経費にできます。
住宅ローン控除を受けている場合、事業用割合が床面積の2分の1を超えると、適用を受けられません。
④消費税や固定資産税を経費に
固定資産税や自動車税などで事業にかかわる税金は必要経費にできます。
固定資産税など、個人だけではなく事業にもかかわっている税金の場合には、家賃や光熱費と同じように按分して事業用の割合を必要経費にします。
個人に対する税金(所得税や住民税、相続税など)は、経費とすることはできません。
税金の種類 | 勘定科目 | |
---|---|---|
経費になる税金 | 事業税 消費税 固定資産税 自動車税 自動車所得税 不動産所得税 登録免許税 印紙税 | 租税公課 |
経費にならない税金 | 所得税 住民税 相続税 贈与税 罰金 加算税 延滞税 | 事業用の口座や現金から納める場合には 「事業主貸」と記帳 |
⑤短期前払費用の特例活用
短期前払費用の特例とは、当期の必要経費として計上できない「前払費用」を一定の要件を満たすことでば当期の必要経費として計上できることを言います。
レンタルサーバー代金やサブスクリプション契約など数カ月分、1年分などまとめて支払う継続的サービス契約の場合に活用できます。
前払いした費用を当期の必要経費として認められる要件は以下の通りです。
- 年払いに関する記載のある契約書があること
- 継続的な役務提供であること(単発の役務の提供については「前渡金」)
- 実際に料金を支払っていること
- 支払った日から1年以内の役務提供を受けること
- 支払い方法や経理の方法を継続すること(一度年払いにすると毎年継続して同じ計上方法をとる必要がある)
- 売上に対応する費用については、認められないということ
⑥個人年金や保険に加入する
個人年金や生命保険、介護医療保険に加入することで一定額を所得から控除できます。
生命保険料控除の額は、契約締結日が平成23年12月31日までの旧契約の控除額は上限10万円で、新契約の控除額は上限12万円となります。
旧契約と新契約の両方を契約している場合には、以下いずれかを選択することができます。
- 旧制度のみ
- 新制度のみ
- 旧制度と新制度の併用
⑦小規模企業共済・経営セーフティ共済へ加入する
「小規模企業共済」は、個人事業主の退職金のような制度で、掛金月額は1,000円〜70,000円の範囲で選べ、掛金は全額控除できます。
仮に毎月70,000円掛けるとすると、12カ月で84万円控除を受けられ、前払いも可能(1年以内のものであれば控除できる)なので最高168万円の控除が受けられます。
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は取引先が倒産したときに個人事業主が経営難に陥ることを防ぐための共済制度で、加入することで、必要経費に算入できる税制優遇制度です。
掛金は月5,000円~20万円まで選べ、途中で増額・減額もできます。
取引先事業者が倒産した場合、無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借り入れることが可能です。
⑧ふるさと納税を活用
ふるさと納税は、都道府県や市区町村に対する寄附で、寄付することで寄附先から特産品をもらうことができます。
ふるさと納税をすると、寄附金控除として申告でき、所得税と住民税を安くすることができます。
控除額は、寄附した金額もしくは総所得金額×40%から2,000円差し引いた額になります。
寄附金控除を受ける対象納付額は、総所得金額の40%が上限で寄附した全額を納税額から差し引けるわけではありません。
以上、個人事業主(フリーランス)の節税について解説しました。
- 個人事業主に課せられる税金は、5種類
- 個人事業主の税金は、節税対策で安くできる
個人事業主は稼ぐことも大切ですが、税金対策をすることも大切ですね。
このようなオンライン秘書の疑問を徹底解決できる本です。
Kindle Unlimited対象のため、電子書籍読み放題サービスにてご覧いただけます。
オンライン秘書を始めたい人は、始める前にぜひご覧ください。
物事には「向き・不向き」があります。
「向いていないこと」より「向いていること」をした方が人生幸せです。
自分がオンライン秘書に向いているか?を確認してみてくださいネ^^